事例は氷山の一角
記者会見では冒頭、洗川和也県連事務局長が民医連の紹介並びに「手遅れ死亡事例調査」について報告しました。続いて森川尚子氏(健和会大手町病院MSW)が2016年に福岡県内の加盟病院・診療所で受診した患者・利用者のうち、①国保税(料)、後期高齢者医療保険料滞納などで無保険もしくは資格証明書、短期保険証発行により病状が悪化し死亡に至ったと考えられる事例、②正規保険証を保有しながら経済的事由により受診が遅れ死亡に至ったと考えられる事例など9件を報告しました。
■調査概要
年齢構成では、60代4人、70代3人、40代1人、80代が1人と60代以上が全体の9割を占めました。この内、5人が独居男性で占められ、相談する相手もなく親族とも疎遠で社会から孤立している様子がうかがえました。
雇用形態では、正規雇用、自営業各1人、非正規雇用2人、年金受給者5人(無職)となっており、年金受給者の年金額は生活保護基準もしくはそれを下回っている状態でした。
受診時状況では、国民皆保険で本来ありえないはずの無保険者が4人、正規保険証(後期高齢者医療含む)が5人となっています。その内、独立行政法人福祉医療機構が運営する「年金担保貸付事業」を利用している人が1人いました。金融機関が年金天引きで国保料(税)や介護保険料、後期高齢者医療保険料(75歳以上)を引き去ると年金はわずかしか残らないため、自覚症状はあっても受診できず手遅れとなった事例がありました。死亡した9人の内、子宮頸がんを患っていた70代の独居女性は、無保険状態の時期に治療を手控えたため病状が悪化。救急搬送されてから3週間後に亡くなりました。
洗川和也事務局長は「貧困が拡大する中で手遅れとなった事例は氷山の一角。権利としての社会保障が切り捨てられる政策に警鐘をならしたい」と語り、記者会見終了後、「命を守る社会保障制度として受療権を保障してください」とする要望書を福岡県に提出しました。